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「この宿屋だよ。例の、おやじが梯子段からころげ落ちたという……」  土田が私をかえりみて外面を指した。嘗つては札幌で一二を争う旅館だったそうだが、今は造りも古び、思いなしか座敷から洩れる灯影もまばらで、何処となく陰気臭く眺められた。  その宿屋に纏るはなしというのはこうである。もはや何年前のことであろうか。四五人の鉱山師仲間が何ヶ月も逗留しつづけていたのである。彼等は毎日のように額を集めては、何十万とか何百万とか途方もないことばかり口走っていたが、宿料の方はかさむ一方だった。しかしそのうちにどういう話合いになったものか、或る日彼等は東京へ行って来るといって、ぞろぞろと繋るようにして宿を出た。何日か経って、彼等は数個のま新しい柳行李を携えてもどって来た。彼等はその柳行李を床の間へずらりと並べ、亭主を呼べと恐しい威勢だった。亭主がなにごとかと座敷へ駆けつけると、目の前へポンと札束が飛んで来た。「おい、千円だ。 Windows 8 wiki Blog | 青は藍より出でて藍よりも青し - Yahoo! Blog