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次が『朝の歌』である。『砂丘』と同じく三浦半島北下浦の漁村で詠んだ歌が大半を占め、東北地方の旅行さきで出來たものが加はつてゐる。同じ三浦半島で 詠んだものではあるが、前の『砂丘』とは歌の性質がすつかり變つてゐる。前と違つて歌に生氣がある。しかも『みなかみ』の樣に神經質のそれでなく、おほど かな靜かな力を持つた生き/\しさであると思つて居る。この歌集あたりから私の詠風といふ樣なものがほぼ一定して來たのではないかと考へらるゝ所がある。 最近の著『くろ土』『山櫻の歌』はまさしくこの『朝の歌』直系の詠みぶりであると見ることが出來るのである。さういふ所から前の『みなかみ』とはまた異つ た意味で私には忘れ難い一册である。これは神樂坂に天弦堂といふを開いてゐた中村一六君の書店から出したのであつたが、これも程なく閉店し、紙型は他へ轉 賣せられてしまつた。同じ店から出した散文集『和歌講話』また然りである。

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