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「いや、全くおどろきましたよ、昨夜の十時ごろでしたかね。私が、ランチにのって、港内を真夜中の巡回をやっていますと、海面にへんなものを発見したんです。船でもないのですが、海面を相当のスピードで進んでいくものがある。すぐさまエンジンをかけて、こいつを追跡しましたよ。ところが、びっくりしたじゃありませんか。近づいてみると、これがたいへんなものです。なんだと思いますか、あなたは。じつに、そいつは、人間の形をしているのですよ。髭づらの老人でしたが、服を着たままで、港外の方へ泳いでいくんです。いや、ところがです。泳ぐといっても、クロールやなんかではない。魚雷が波をきって進んでいくようなあんばいで、すっと波を切って走っていくんですからね、しかも相当のスピードでいかなオリンピックの選手だって、ああはいきませんよ。私は、まるで狐にばかされているような気がしましたが、なにしろはやいのですから、そのままに放っておけません。すぐさま無電で、本署に報告しました。――本署ではおどろいて、私になおも追跡を命ずるとともに、警備艦隊へ知らせたんです。そこで、大さわぎとなったんですが、その泳ぐ怪人を追跡していったのはついに私のランチだけで、他の艦艇は、みな間にあいませんでした」  と、飛田警官は、そこで身ぶるいした。 


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