「わしは今日、コーヒーにたたられているようじゃ」 艇長は、朗かなこえをのこして、室外へとびだしていった。 震動は、いいあんばいに、ようやくとまったようである。 三郎は、雑巾で卓子のうえをふきながら、 「はて、宇宙塵とは、どんなものだろうねえ」 と、ふしぎそうに、首をかしげて、卓子のうえの同じところをいくどもふいている。 そのころ、廊下が、いやにさわがしくなった。大ぜいが、靴音もあらあらしく、かけていく様子である。 三郎は、不安な気持になって、出入口の外に顔を出した。 「おう、鳥原さん。なんです。このさわぎは……」 ちょうど幸いに、三郎は、日頃兄のように尊敬している艇夫の鳥原青年が通りかかったのでいそいでこえをかけた。 「やあ、風間の三ぶちゃんか」 鳥原は、そばへよってきて、 「どうもえらいことが起ったよ。本艇は、故障を起してしまったよ。そして、編隊からひとり放れて、もうずいぶん後にとりのこされてしまったよ」 と、鳥原青年は、いつになく、おちつきをうしなっている。
スマートフォン広告 アドリブ(AdRib)」 天才になるのに遅すぎることはない