クルミさんは、固唾を呑みながら、外を見た。 窓の外には、すがすがしい新緑に包まれた湘南の山野が、麗かな五月の陽光を浴びながら、まるで蓄音機のレコードのように、グルグルと際限もなく展開されて行く。そういう景色を眺めながら、クルミさんはなんとかして自分の気持を引きたて、今朝の元気をとりもどそうと、つとめてみるのだった。 ところが、気持が引きたてられるどころか、この時、却って、大変もないことが起きあがってしまった。 さっきから、少しずつズレかかっていた紳士の顔の上の新聞が、この時、ガサッと音をたてて、紳士の横坐りになっている膝の上へ落ちて来た。 クルミさんはヒヤリとなった。どうしようかと思って、紳士の顔と、落ちた新聞を見較べた。 むろんこのまま、そっとしておくより仕方はない。がしかし、この時クルミさんは、思わずギクリとなった。
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