Site hosted by Angelfire.com: Build your free website today!

 半九郎は血刀で指さした。女のおびえた眼にはよく判らなかったが、源三郎は肩と腰のあたりを斬られているらしく、河原の小石を枕にして俯向きに倒れていた。そのむごたらしい血みどろの姿を見て、お染はぞっと身の毛が立った。彼女は膝のゆるんだ人のように顫えながらそこにべったりと坐ってしまった。  元和の大坂落城から僅か十年あまりで、血の匂いに馴れている侍は、自分の前に横たわっている敵の死骸に眼もくれないで、しずかに川の水を掬んで飲んでいた。お染も息が切れて水が欲しかった。 「もし、わたしにも……」  彼女は手真似で水をくれといった。足が竦んでもう歩かれないのであった。半九郎はうなずいて両手に水を掬いあげたが、今の闘いでさすがに腕がふるえているらしく、女のそばまで運んで来るうちに、水は大きい手のひらから半分以上もこぼれ出してしまった。彼は焦れて自分の襦袢の袖を引き裂いた。冷たい鴨川の水は、江戸の男の袖にひたされて、京の女の紅い唇へ注ぎ込まれた。 「かよわい女子が血を見たら、定めて怖ろしくも思うであろう。どうだ。もう落ち着いたか」 不用品買取 大阪 遺品整理(買い取り)は東京のリサイクルショップポンポンストア。