「成程ねエ――」
三人三様の議論が丁度一巡したところへ、後の扉がコツコツと鳴って、三等水兵の、真紅な顔が現れた。
「紙洗大尉どの、井筒副長どのが、至急お呼びであります」
「おお、そうか。直ぐに参りますと、そう御返事申上げて呉れい」
紙洗大尉は、傍の帽子掛けから、帽子と帯剣とを取ると、身繕いをした。
「直ぐ帰って来るからな、一服しとれよ」
そう云って彼は敏捷に、部屋から出て行った。
だが其の紙洗大尉は、二十分経っても、三十分経っても、帰って来なかった。一時間の時間が流れても、彼の靴音は、聞えなかったので、二人の同期の友人は、云い合わせたように立上った。
「どれ、部屋へ帰って、今のうちに、辞世でも考えて置こうかい」
「俺は、いまのうちに、たっぷり睡って置こうと思うよ」
そこへ、紙洗大尉が、飛ぶようにして、帰って来た。
「おいどうした」
「大いに深刻な顔をしているじゃないか」
紙洗大尉は、二人の友人の問を、其儘聞き流して、ジッと立っていた。
西宮 税理士 西宮の税理士 吉岡慶太の「仕事を楽しみ尽くすブログ」