明くる日になると、おじいさんは、疲れてこたつのうちにはいっていられました。太郎は、お母さんやお父さんと、おじいさんの持って帰られたかにを食べようと、茶の間にすわっていました。お父さんは小刀でかにの足を切りました。そして、みんなが堅い皮を破って、肉を食べようとしますと、そのかには、まったく見かけによらず、中には肉もなんにも入っていずに、からっぽになっているやせたかにでありました。 「こんな、かにがあるだろうか?」 お父さんも、お母さんも、顔を見合してたまげています。太郎も不思議でたまりませんでした。 おじいさんは、たいへんに疲れていて、すこしぼけたようにさえ見られたのでした。 「いったい、こんなかにがこの近辺の浜で捕れるだろうか?」 お父さんは、考えながらいわれました。 海までは、一里ばかりありました。それで、こんなかにをもらった町へいって、昨夜のことを聞いてこようとお父さんはいわれました。 太郎は、お父さんにつれられて、海辺の町へいってみることになりました。二人は家から出かけました。