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「ほう、一泡ふかせるんですって。すると貴方はまだ人を殺すつもりなんですね」 「そうだ、見ていろ、今夜また素晴らしい殺人事件が起って、警察の者どもは腰をぬかすんだ。誰が殺されるか。それが貴様に分れば、いよいよ本当に手を引く気になるだろう」 「一体これから殺されるのは誰なんです」 「莫迦! そんなことは殺される人間だけが知ってりゃいいんだ」 「ええッ。――」 「そうだ、帆村君に一言いいたいという女がいるんだ。電話を代るからちょっと待っとれ」 「な、なんですって。女の方から用があるというんですか――」  帆村はあまりの意外に、強く聞きかえした。そのとき電話口に、蠅男に代って一人の女が現われた。 「ねえ、帆村さん」 「貴女は誰です。名前をいって下さい」 「名前なんか、どうでもいいわ。けさからあたしたちをつけたりしてさ。早く宝塚から……」  とまで女がいったとき、帆村は向うの電話器のそばで、突然蠅男の叫ぶ声を耳にした。 「――し、失敗ったッ。オイお竜、警官の自動車だッ」 「えッ、――」  ガラガラと、ひどい雑音が聞えてきた。怪しき女は受話器をその場に抛りだしたものらしい。なんだか戸が閉まるらしく、バタンバタンという音が聞えた。それに続いて、ドドドドッという激しい銃声が遠くに聞えた。 「あ、機関銃だ!」  帆村は愕然として叫んだ。 


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