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 鉄物屋の清太郎が見たという若い女は、気ちがいでなければ何者であろう。おそらく寺の留守坊主に逢いに来る女ではあるまいかと半七は鑑定した。かれは子分どもに云いつけて、その坊主の行状を探らせたが、円養は大酒呑みでこそあれ、女犯の関係はないらしいとのことであった。女の幽霊の正体は容易に判らなかった。  十二月十六日の朝である。半七が朝湯から帰ってくると、河内屋の番頭の忠三郎が待っていた。 「やあ、番頭さん。お早うございます」と、半七は挨拶した。「例の一件はなにぶん捗がいかねえので申し訳がありません。まあ、もう少し待ってください。年内には何とか埒をあけますから」 「実はそのことで出ましたのでございます」と、忠三郎は声をひそめた。「昨晩わたくしの主人が或るところで彼の一軸をみましたそうで……」 「へえ、そうですか。それは不思議だ。して、それが何処にありましたえ」 豊中 インプラント 虎穴に入らずんば虎子を得ず