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「おい、おめえはここで何をしていた。正直に云わねえと為にならねえぞ。おめえはこの座敷にいた客のうちで、誰か知っている人でもあるのか。ほかの女中はみんな小さくなって引っ固まっているのに、おめえ一人はさっきから其処らをうろうろしているのは、なにか訳があるに相違ねえ。この男を識っているのか」と、半七は蚊帳のなかに倒れている七蔵を指さして訊いた。  女中は身をすくめながら頭をふった。 「それじゃあ連れの男を識っているのか」  女中はやはり識らないと云った。彼女はおどおどして始終うつむき勝ちであったが、ときどきに床の間に列んだ押入れの方へその落ち着かない瞳を配っているらしいのが、半七の眼についた。その頃の旅籠屋には押入れなどを作っていないのが普通であったが、この座敷は特別の造作とみえて、式ばかりの床の間もあった。それに列んで一間の押入れも付いていた。  その押入れを横眼に見て、半七はうなずいた。 楽天市場 還暦祝い 男性 プレゼント 豊田市男性保育師連盟